「りかちっ!プライベートビーチって、冗談じゃなかったのかっ!」
「うん、私、今まで嘘と冗談は、言ったことがないから」
「あじかっ!いやいや、それが嘘でしょ!?」
「ふふ」
移動時間が結構あったのもあり、ここに着いた時には、すっかり夕暮れ時になっていた。
今日は、梨花の所有している別荘に来ている。
泳ぐわけではないけど、とりあえず日が暮れちゃう前に雰囲気を堪能したくて、わたし達は水着に着替えていた。
「ゆんちゃんも莉菜も、遠くからありがとね」
「いやいや、なんかうちの前までハイヤー来たし、移動はめちゃくちゃ快適でした!」
「莉菜、なんで敬語よーっ」
「なんか感動しちゃって、ついねー」
「わてのとこは、タクシーが迎えに来て、駅から電車だったんだけど…」
「あぁ、ちょうど九州支部は、運転手とハイヤーが出払っててさ。ごめんごめん。てか、わてって…」
テレビの画面から出てきたかのように、ゆんちゃんは想像通りのキャラ。
もーめっちゃくちゃ、テンションが上がる。
「じゃ、一回引き上げて、ご飯にしよっか。用意できてるからさ」
「うん!賛成の反対の反対!」
「て、ゆんちゃん!分かりにくいっ!」
「(ΦωΦ;)ハッ!」
「おお!?なんかいつも使ってる、猫目の顔文字が見えた気がするよっ!」
花火はもう少し、暗くなってから。
絶え間なくわーきゃー言いながら、わたし達は食事を済ませる。
「めちゃくちゃ美味しかったよっ!あれ、梨花が作ったの?さすがでござる!」
「なわけ無いでしょ。分かってて言ってるでしょ?莉菜、あとでお仕置きね」
「はい、りなち、アウトーっ!来ました、来ましたよ!夜のお仕置きターイムっ…て、ご褒美やん!!ずるいで!」
「ぬはーっ!お仕置き…ありがとうございますっ!」
「あ、ありがとうってさ…オリゴ糖に似てるよね?」
「それ!いつか誰かが言ってたやつっ!」
浴衣に着替え、砂浜に座ったわたし達。
何気なく、他愛もない話はとめどなく続いてゆく。
こんな瞬間が刹那ではなくて、永遠ならいいのに。
時間は永遠じゃないんだって、分かってはいるんだけれど。
理解し切れないもどかしさは、誰しもが感じているんだろうな。
そう、今は今しかない。
『明日は明日の風が吹く。』
意味は違うけど、なんだかその言葉が思い浮かんだんだ。
「太陽が沈みきったらスタートだって言ってあるから。あと…そうね、20分くらいかな」
打ち上げ花火を待ちながら。
待つことに、もどかしさよりも嬉しさを知る。
進まない時と、沈まない太陽を見ながら、わたし達は今を堪能する。
『明日は明日の風が吹く。』
頬に当たる潮風は、少しだけ冷たくなってきた。
そんな今日の風を惜しむように、肌と髪で感じながら。
わたしは一人、泣きそうになってしまっていたのは内緒だよ。