「いやぁ、毎日暑いねぇ。ここんとこ、全然雨も降らないし」
「うん、今年は本当に暑いね。災害レベルだってさ」
二人で過ごす、穏やかな時。
ひなたぼっこをしながらさ、天気の話とかしちゃったりして、なんだか気心知れた夫婦みたい。
そう、いつでもわたし達の間には、緩やかな空気が流れる。そう感じる。
みんなでってのもいいんだけど、たまには二人、二人っきりの時間もいいものだ。
「さてと。ゴルフでもしますか」
「うん、いいよ」
勝負って考えたら、わたしはいつでも負けっぱなし。
6の頃。マッチの通算成績は、だいたい五分だったんだけど、最近は全然勝てなくなっちゃった。
まぁとにかく楽しいから、いいんだけどー。
たまにお互い気合い入れて、『本気でやろう!』ってなる時は、ゴルフウェアに着替えてから行くのが決まりごと。
これはこれで、ぞくぞく、ぞわぞわ、とにかくたまらない瞬間だよねー。
「いゃあ、参りました!」
「いやいや、りなも良かったよ。たまにしか来ないのに、あのスコアはすごいよ」
「うっは!」
「あ、嫌味じゃないからね」
いつだって、言葉は結構ストレート。
でも、わたしはハッキリ物を言う人が好きだから、完全にツボなんだ。
まぁ、あんまり好き好き言うと気持ち悪がられそうだから、とりあえずは秘めておく…って、まぁ割と言いすぎちゃってるし、もうバレバレなんだろうけどね。
「ねね、りか。今日のカナロアは夕暮れだね。夕日、見に行かない?」
「うん、いいよ」
こんな時、『いいね』じゃなくて、りかは『いいよ』って言う。
そんなところも堪らない。
なんか引っ張ってくれそうな、リードしてくれそうな感じがして、ドキドキしちゃうんだ。
「ビーチでさ、おすすめの場所ある?ついてくよ」
「あい」
あなたの背中を追う。
遅れないように、見失わないように。
そして見ていないのをいい事に、毎回にやけちゃってるんだけど、それは内緒の話。
「うあー!きれいだね」
「うん」
そして心地よい沈黙。
風を感じながら、きれいな風景を見ながら過ごす、ゆっくりとした時間はまた格別。
まるで恋人と過ごすみたいなトキメキに、わたしはちょっぴり罪悪感さえ覚えてしまう。
それくらい好きなんだ。
『魚心あれば水心』って話、この前何かの時に話してたよね。
うちらってさ、どっちが魚で、どっちが水なんだろうって思ったけど。
最初はどっちかだったのかもしれないけど、きっと今ではお互いが魚であり、水だよね。
「りかに言いたいことがあります!」
「あい」
「大好きです!!!」
唐突に告白してしまった、あの日。
なんの話かなって、びっくりさせちゃったかな?
まぁでもいいよね。
それくらいの話だもん。わたしにとって。
暮れそうで暮れない、永遠の夕日を見ながら。
永遠に変わらない気持ちなんてないんだよって、昔の彼に言われた言葉を思い出していた。
『永遠に変わらない気持ちは無いかもしれないけど、この気持ちがあった事実は永遠だから』
あの時には言えなかった、この言葉。
そんな屁理屈みたいな言葉で塗りつぶす。
わたしの掲げる永遠に、あなたの全部を巻き込んで。
一緒に謳う、永遠ごっこ。
これからも、ずーっとずっと一緒だよ。
永遠に。